稲村岩から鷹ノ巣山(奥多摩)

赤のルート


                        1997年4月28日(月)快晴

(JR・青梅線奥多摩よりバスにて)東日原BS902…巳ノ戸橋917…1005稲村岩1015…
                          (610)   15  (550)   48    (920?)   92

ヒルメシ食いのタワ1147…1210鷹ノ巣山1231…倉戸山分岐1251…倉戸山1404
         (1560)    23  (△1737)    20   (1600)    73 (△1169)

…倉戸口BS1447…1504奥多摩湖BS(バスにてJR・奥多摩へ)
43   (560)   17         (540)


                               体力度B 神経度A+(歩行合計5時間45分)
 ◇5万図 秩父・五日市

 鷹ノ巣山は、ガイドブック等でも非常にポピュラーな山です。奥多摩からハイキングを始めた人は、棒ノ折山、高水三山、大岳山、御前山、川苔山あたりの次には目が向くのが石尾根あたりでしょう。筆者が、この山に初めて登ったのは南面の浅間尾根からで、その時は運良くバスが峰谷BTまで入ってくれましたので、すぐに尾根に取り付くことが出来ました。ガイドブックにはむしろ北面の稲村岩尾根の方が第一の代表的コースとして紹介されていましたが、ガイド文からは、「鉄砲登り」「展望のない道をひたすら登るので単調」「きつい」とか、「北面」ということで、なんだか暗いイメージを持ってしまって、ずーっと後回しにしてしまっていたのです。その後、筆者唯一の山小屋泊、秩父三峰(その時実際に通ったのは2つの峰だけ、ちょっと東に突き出ている妙法ヶ岳には別途後日に訪れました。)・雲取山からの下りでも立ち寄りました。
 今回は、その稲村岩尾根から登って、榧ノ木尾根を下る縦断コースを採りました。鷹ノ巣山からの下りは前2回とも、好展望峰六ツ石山にも登れて、バスを使わず直接奥多摩駅に着けるということで、石尾根経由でしたが、他にも幾つかルートが組めますのでその第一弾として榧ノ木尾根を選んだのです。

 奥多摩駅に着いたのが8時20分過ぎ。東日原行きバスの時刻を調べたら、800の次が936。ガーン!朝の1時間ロスはきつい!!。と、途方に暮れていたら、人数が集まって、臨時バスが8時40分過ぎに発進。メデタシ、メデタシ。大半の人は川乗橋で降りて、終点の東日原では10名以下になっていましたので、「すいてそうで良かった」と思う反面、「道はしっかりしてるのだろうか?」と不安にもなりました。正面には稲村岩の絶壁(5万図のコンターからは比高240mくらいありそう)が見えます。
 東日原BSから5分ほどで中日原BSを過ぎてすぐに標識に従って左へ下って行くと「ラジオか鈴を…」という警察の標識。いつも山でラジオ等の声が聞こえると「山まで来てラジオを鳴らすとは無粋な!」と憤慨するのですが、話が別。ビビって鈴をザックに付けることにしました。「熊にもイノシシにも蝮にもスズメ蜂にもハンターにも出会いませんように」と祈りつつ下りきって巳ノ戸橋を渡ります。
 ここから山頂まで標高差が約1200mもあるのでスタミナが心配で、意識的にペースを押さえて行きます。さすが奥多摩。こんな人影まばらな山深い所にある道でも太く明瞭で、非常に歩きやすく整備されていて、分岐や要所ごとに指導標も完備しています。しばらく登ると石で埋まってしまった堰堤の上で沢沿いの道となります。初めは伏流ですがやがて清流が見えるようになり、稲村岩の基部に沿うように登って、尾根に出たところが鷹ノ巣山と稲村岩の分岐で、ここから稲村岩へ往復することにします。
 ガイドブックによっては、稲村岩の頂上まで「5分ほどで行ける」とか「往復で15分くらい」と書いてありますが、今回、登りで10分、下りは筆者お得意のビビり症によるルート試行錯誤が出てしまって15分要しました。頂上は、展望が良く日原の集落が小さく見える先には川苔山、本仁田山が目立ちます。目を180゜転じると、さっきの道を登ってくるハイカーの姿も見下ろせました。ここには、小さな祠があり、また、「稲村岩 843m」のプレートもありましたが、先ほどの分岐点の標高が900m弱で、そこから20〜30mは登っていると思うのですが…。


 稲村岩から本仁田山 眼下は日原の集落。


 先ほどの分岐へ戻り、尾根道を登り始めます。前後の数組のハイカーはいずれも稲村岩には立ち寄らず、分岐点を通過してしまったようですが、まだ時間的に余裕がある時刻なのに勿体ない!。メインルートは鷹ノ巣山頂まで整備された道が続くコースですから、稲村岩へのの露岩歩きは行程に変化がついて楽しい所だと思うのですが。
 さて、この尾根道、始めは、樹幹から周りの景色が見えてグイグイ高度が上がっているのが確認出来たり、時々ピンクのツツジの花が見えたりして、目で楽しみながら登れるのですが、やがて、道の両側の林の下草が背丈2mほどもある密生した笹薮になって来て、左右の視界が単調になります。しかし、このルートにも川苔山と同様に海抜50mごとに「ここは海抜約○○m」という小さなプレートがあって、グングン高度が上がって山頂に近付いて行くのを知ることが出来て励みになります。勿論、後ろを振り返ると長沢背稜等の眺めも得られます。
 尾根の傾斜は登るに従って緩んで来ているように思えます。やがて、平坦になり「ヒルメシ食いのタワ」の標識(5万図1560m地点)がありますが、昼飯は山頂までお預けにして通り過ぎます。「タワ」というので、高度をロスするような鞍部を想像して心配していたのですが、肩のような所で、その先僅か数mのたわみの後、間もなく最後の登りが始まり、一安心。山頂が近付くと苔が出てきて奥秩父の趣の場所もあります。
 鷹ノ巣山山頂に出ると、突然南面の大展望が広がります。まず、目にはいるのはやや右手の富士山ですが、左手から目を移して行くと、石尾根のうねりの向こうに大岳山、御前山、そして正面には広い根張りが立派な三頭山が目立ちます。この季節、さすがに奥の丹沢・道志は霞んでいます。右手やや奥には雁ヶ腹摺山と大菩薩連嶺。やはり、晩秋にもう一度来て山座同定をせねば。


 山頂東面より大岳山 ・御前山方面。


 さすが銀座通り、憩うハイカーは筆者が到着した時すでに15名ほども居り、出発時には30名を越えていそうで、まだまだ増える勢いでした。
 下りは、まず広くて気分の良い防火帯の石尾根縦走路を行き、やがて右側を通っているの巻き道へ移ります。巻き道を3分ほど東進すると榧ノ木尾根への分岐です。この南面の巻き道は七ツ石山から六ツ石山までずーっと付いていて、石尾根縦走路としてはアップダウンのないこちらがメインになってしまっているようです。(以前、筆者が鷹ノ巣山〜六ツ石山の尾根道を通ったときは薮がちで、一部踏跡が怪しくなっている箇所さえありました。)
 榧ノ木尾根は、林間の静かな道で、ひとしきり下った後緩い登り下りが2〜3現れて、下降路と言うよりは、縦走路の様相を呈してきます。この辺が、5万図「榧ノ木山」注記の左の1460mコンターで細長く囲まれたあたりでしょうか。
 やがてまた下りが始まり、その先で下りが緩むと尾根は広くなります。ここまで、人に会わなかったのに、花もないのに道端にレジャーシートを敷いて宴会をしている13名ほどの団体が居たのには驚きました。更に下り続けると、僅かな登りで倉戸山の広場に着きます。鷹ノ巣山では見下ろしていた御前山がヤケに立派になっています。ここから左の道を選ぶと、樹間から、奥多摩湖の碧の水面を目に入れながらどんどん下って行きます。後少しで、熱海の集落と言うところで2つの団体に追いついてしまいました。一つ目の10名ほどの団体は、リーダーが声を掛けて道を譲ってくれましたが、そのすぐ先の15名ほどの中高年団体は、それぞれの構成員がずるずると滑りやすい足下に夢中で、他人の事なんてお構いなし。仕方なく、傾斜がやや緩まったところで、いけないと知りつつ渋滞の東北道よろしく側道(そんなものある訳ない。実は林の中。T_T)を駆け下りて追い越してしまいました。
 下り着いた熱海集落の車道を更に下って倉戸口BS。しかし、次のバスまで40分以上あり、ここ自体あまり面白い場所でなく、尚かつ朝の奥多摩駅で奥多摩湖行きのバスが頻発していたので、少し先の奥多摩湖BSからなら、帰りのバスも頻発しているのではないかと期待して、青梅街道を小河内ダム方向へ歩きました。始めは、歩道がなく、カーブも多いので車にヒビりましたが、右へ大きくカーブしている内側が駐車場になっている所からは歩道があり、一安心。
 観光客で賑わう湖畔の奥多摩湖BSでは奥多摩駅行きのバスが待機しており、焦って乗り込みましたが、満員の乗客を乗せて発車したのは5分後でした。恐れていた通り、途中の境橋からは更に数名が乗り込んできました。でも人生、捨てたものではありません。僅かの時間の辛抱の後、到着した奥多摩駅では、発車直前の特快に乗ることができました。

 これから、初めて鷹ノ巣山に登ろうとされる方には、下りには六ッ石山経由奥多摩駅(石尾根縦走路)を使うとして、登りには稲村岩尾根(北面)と浅間尾根(南面)のどちらがお勧めか、と言うことなのですが、やはりガイドブックの順番通り、稲村岩尾根をお勧めします。
 浅間尾根では、登るに従って展望の広がりが最終的に山頂で見られるものに近付いていくだけですが、稲村岩尾根なら、登るに従って北面の展望(遠望ではなく、石尾根、長沢背稜から川苔山、本仁田山に囲まれた、ちょっと閉塞的な眺めですが)が広がり、山頂では浅間尾根の時と同様、南面の大展望も得られるからです。それに、稲村岩の露岩歩きもあるし、一粒で3度美味しいってかっ?!。



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