八紘嶺〜山伏(駿河)



                         97年5月2日(金)快晴後曇

(JR東海道線・静岡よりバスにて)梅ヶ島温泉BT807…富士見台929…1032八紘嶺1045…
                              (870)   82  (1600)   63  (△1918)    79

1204大谷嶺1214…新窪乗越1242…1337山伏1345…登山道入口1459
 (△2000)    28 (1860)    55(△2013)    74     (940)

…1532赤水BS(バスにてJR・静岡へ)
33     (690)


                                体力度B+ 神経度B(歩行合計7時間10分)
◇5万図 南部
□筆者参考文献 「東京周辺の山」(山と渓谷社)

 静岡県静岡市を流れる安倍川流域には、東京方面から高い交通費を使ってわざわざ出掛けて行く価値のあるハイキングコースが結構あります。この辺の山は、海抜標高の割に標高差があってスケール感のある眺めが楽しめる反面、きついのが特徴ですが、最奥に位置して山深いはずの八紘嶺(はっこうれい)は、標高900m近い梅ヶ島温泉郷までバスで入れますので、意外に容易に登れます。そこで、まず八紘嶺に登り、尾根伝いに登れば、安倍川流域最高峰の山伏(やんぶし)登頂も楽なのではないかと目論んだのですが……。

 筆者は、前夜発は眠いのできらいなのですが、梅ヶ島温泉への1番バスに乗るためには止むを得ません。バスの待ち時間もかなりあるので、近くのコンビニで食料を仕入れるくらいでは持て余してしまいます。一人ならヘッドホンステレオでも持っていった方がいいかもしれません。
 安倍川の最奥まで遡るバスの乗車時間は2時間近いので、眠ったり起きたりしながら行きました。

 梅ヶ島温泉BTからそのまま林道を登り、急カーブを2つ3つ越えると、歩き出しから数分で左手に登山口。ヒノキの植林帯をジグザグに登ると、すぐに温泉郷の集落は低く、小さくなっていきます。尾根に出たところで、先程の林道が右手から巻き上がって来ますが、接しただけで林道は再び尾根の右手山腹を安部峠方面へ遠ざかり、登山道は自然林となった尾根上を登って行きます。そこから30分ほど登って主稜線に出たところの富士見台は尾根の右手が崩壊した縁から富士山が望めます。
 ここからも、非常に気分の良い明るい尾根の登りが続きますが、やがて尾根が急になるところが出始めます。そんなところでは、右側が急斜面なためか道は左から巻いて、ジグザグに登ります。最後の急登が近付くと、向かっている尾根の右手に北岳らしき三角錐、左手には聖岳らしき台形が見えます。


 八紘嶺への登りから北岳を望む。


 一つピークを越えて二つ目のピークの登りから振り返った図は、両側の尾根から支尾根が安倍川の谷に向かって幾重にも錯綜していて、実に山深い感じの絵になります。この図は頂上付近ではこの方向の足下の傾斜が緩く、立木が邪魔をして見ることが出来ませんので、初めて来た前回(95.11.04)は、「もっと登ってから」と欲張って写真を取り損ねてしまいました。二つ目のピークから山頂までは平坦に近い道です。
 八紘嶺山頂からは、富士山は勿論、笊ヶ岳の右に北岳、左に聖岳らしき南アルプスの高山・深山も望むことができます。前回行った七面山方面、これから行く山伏方面への稜線も美しく眺められます。
 今回は、下山後15時台のバスに乗るつもりで、軽装かつ単独行を頼りにガイドブックのコースタイムの約1割減で計画を立てました。しかも、そこから更に短縮した分が休憩時間という忙しい計画です。およよよ。八紘嶺まで、前回の実績から2時間と見込んでいたのに、2時間25分も掛かってしまいました。これでは、山伏の頂上でゆっくり休憩どころか乗車予定のバスに間に合わなくなる恐れさえ出てきました。遅れたら18時台のバスで静岡に戻り、新幹線を使えば何とか今日中に帰宅可能と思われますが。
 ともかく、10分ほどの滞在で、だれもいない(前回は数組いた)山頂を後にしました。


 八紘嶺山頂。


 始め、大きく下ったあと細かく急な登り下りがいくつかあります。特に、二つ目の鞍部からの登りの3mほどの部分は、ザレた急斜面で、岩は脆く、手の届く木もなく、古い固定ロープがあるものの途中でちぎれていて手が届かず(届いたとしても、信頼できるものではないのですが)いやなところです。
 その後も、上り下りは続きますが、自然林で気分の良い道です。下草は密生したササですが、幅2〜3mほど刈り込まれていて、その中心の道は良く踏まれています。
 大谷嶺への登りで本日初めての登山者に出会ったと思ったら、立て続けに4組とすれ違いました。やはり、奥多摩等と比べると山深いので時間的行動パターンに制約があるようです。大谷嶺を越えると、尾根の左側は大谷崩と名付けられている崩壊地です。その一番山伏寄りまで来たところが、下山道が分かれる新窪乗越です。
 ここで、時間を確かめると、相変わらずあまり短縮されていません。それで、ここからは、意識的に飛ばすようにしました。
 山伏が近付いて来ても相変わらず、アップダウンがあり、右手の南アルプスの眺めをゆっくり楽しむ余裕はありません。冷静に考えれば、まだ先なのは明白なのに、焦っているため、ピークが近付く度にそこが山頂であることを期待してしまうこと4〜5回、本当の山伏山頂は北西面へ回り込み、残雪をよけながらやや急登をあえいだ後、緩くなった傾斜の先にありました。
 山伏の山頂は広い笹原で、立木もあるので一点からとは行きませんが、場所を変えれば、富士山方面、南アルプス方面等、広い展望が得られます。方々合わせると10人ほどが憩っていました。皆さん、マイカー組のようで、のんびりした表情ですが、バスの時刻に余裕のない筆者は、おにぎりを胃に詰め込み、そそくさと立ち去るよりありませんでした。



 山伏から南アルプスを望む。


 山伏から新田BSまでの標準コースタイムは、2時間15分。目標下山時刻まで2時間弱。なんとかなりそうですが、足早に下ります。蓬峠から更に下って沢に出ますが、美しい渓相を眺める気分ではありません。ワサビ田を通過して更に下り登山口の標識で車道に出ます。ここでようやく、残り時間が残りコースタイムに追いつきました。
 車道の横の河原は、意外に広く、安倍川本流とそれ程変わりません。もっとも、地形図で見ると、分岐からそれぞれの源流までの距離もそれ程変わらないので、八紘嶺方面が本流に思えるのは梅ヶ島温泉があるせいかも知れません。河原をブルドーザーで地ならししています。どうやら、オートキャンプ場の造成のようでした。
 何となく、バス停が遠いように思えて時々ジョギングしてしまいます。新田BS手前1kmほどの所で、Y字路を標識が「県道」を示す右の真新しい道を行ったら新田BSより一つ静岡寄りの赤水BSに着いてしまいました。
 バスは、約20分後の1551ごろ来ましたから、5/2は平日時刻だったようです。バス停の標識ポールに掲示されている時刻表によると休日時刻なら1539なので、結構ぎりぎりになるところでした。バスの乗客は数10分走行後地元の小学生が乗り込んで来るまでの間、筆者ひとりの状態が続きました。

 とにかく、すばらしいコースです。高い交通費を使って、眠けをこらえて、東京から前夜発で出掛けて行った価値が十分ありました。
 道は、大部分自然林とササで、倒木や石が苔むしていたりして趣がある場所もあります。山深いのにも拘わらず道は奥多摩並に整備されており、指導標も完備していて安心して歩けます。なおかつ、人にあまり出会わず静かな山歩きが楽しめます。
 全般的に、明るい雰囲気で、随所で得られる南アルプスや富士山、安倍川流域等の展望もすばらしいです。
 今回は、ちょっと忙しい思いをしましたが、いずれもう少し歩程を短くして訪れて、山伏の笹原でのんびりしてみたい気もします。



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