96年12月29(日)快晴 名郷BS805…935鳥首峠940…滝ノ入の頭1015…1045橋小屋の頭1055…タタラの頭1125 (320) 90 (937) 35 (△1071) 30 (1163) 30 (△1214) …1205仁田山1215…1255日向沢の峰1305…長尾丸山1425…1505棒ノ折山1510 40 (1211) 40 (1356) 80(△958) 40 (976) …黒山1530…名坂峠1620…1720JR・川井 20(△842) 5 (750) 60 (240) 体力度C- 神経度B+(歩行時間約8時間35分) ◇五万図 秩父・五日市 □筆者参考文献 「ハイグレードハイキング」(山と渓谷社) 有間山は、最近では主に1213.5m三角点(タタラの頭)付近を指すようですが、元来、名栗川上流域で秩父側の浦山川流域との境をなす、鳥首峠から仁田山の南まで、にかけての稜線の総称です。橋小屋の頭より北部は蕨山と結んだりして、よく歩かれていましたが、昔は南部は猛烈なスズタケの薮と無展望の樹林帯のため、篤志家向けのコースだったようです。数年前に初めて行ったときはスズタケなのかどうかは知りませんが、笹薮がひどく、タタラの頭付近と林道の乗越し(仁田山の北の鞍部)地点付近までの間、ルートを見失いがちになりながら泳ぐようにして歩いたものです。 一方、棒ノ折山は、東京周辺の住民には格好のハイキング入門の山で、奥多摩側、奥武蔵側両方からよく整備された道が通じていますが、そこから、北に延びて行き日向沢の峰(ひなたさわのうら)付近で川苔山からの尾根と合流する都県界の尾根は、長尾丸山と5万図に名前が記載された三角点峰がありながら、あまり歩かれていないようです。やはり、薮への警戒と、奥まった方向に行ってしまうので、標高の割に歩程が長くなりがちなためでしょう。 筆者にとっても棒ノ折山〜日向沢の峰は空白区間だったのですが、最近藪山にも少しは慣れてきて、草が枯れた季節なら薮漕ぎに対する抵抗感は薄らいで来ましたので、歩いてみることにしました。どうやっても、ロングコースになってしまうので、正月休みなら万一2〜3日グロッキーになっても大丈夫ということで有間山と結んで、筆者にしては超ロングコースの計画となりました。草が枯れ、積雪も少ない季節となると、日が短いという関係で、日没との競争になることは必定でした。 西部線飯能駅前発7時10分の名郷行き(月〜土は、更に先の湯の沢行きになります)バスで8時すぎに名郷着。すぐに車道を歩き始め、砕石施設の所で指導標に従って右手の階段から山道へ入り、小屋のある小尾根の乗越しを過ぎ、植林の中をジグザグに登り切ると鳥首峠です。ここまで、1時間30分。前回、大持・武甲方面へ歩いた時より、20分ほど余計にかかっていますが、長丁場を考えて意識的にペースを押さえ気味にしました。 小休止の後、いよいよ、有間山縦走の始まり。南に向かって歩き出すとすぐに送電鉄塔の広場。展望の良さにつられて、切り開かれた右手の尾根へ入ってしまいそうですが、左の林の中へ入るのが、ルートです。ここから、両手動員の急登ですが、これを下るのはちょっとビビるかも知れません。やはり、冬場は凍っても融けても滑りやすい北面が登りとなる南下コースに限ります。その後は、所々露岩の出た広い道を小さな上下を繰り返しながら、高度を上げて行きます。この間、随所で、右手には両神山が、左手後方には、日光から上越国境方面が望まれます。 タタラの頭への登り道から西上州方面。やがて、蕨山方面からの道が合する橋小屋の頭です。「有間山」の看板があまりにも立派なのですが、核心部はここから先です。しかし、タタラの頭方面への道に入ると、あまりの歩きやすさと展望のすばらしさに驚かされました。笹が刈り取ってあるうえに、防火帯のように伐採してあって、あまりのあっけなさに却って寂しいくらいです。タタラの頭の少し先で、笹薮に入りますが、両側から道の上にかぶっているという程度で、ルートの心配は皆無でした。林道の乗越し地点は切り通しなので、その手前で左折して一旦林道に降ります。ちょっと林道を歩くと切り通しですが、なんと、その手前から分岐して仁田山の東側を巻くように林道が造られているではあ〜りませんか!!。「仁田山の向こうで合流したらいやだな」と思いながらもその林道へは入らず、仁田山へは切り通しの秩父側のへりを登って行きます。 仁田山を過ぎ、川又への下降路を左に見送ると、日向沢の峰方面への登りです。一段登った所の送電鉄塔の広場は、見晴らしがよく、振り返ると、たどり来た有間山の稜線、その左に大持山方面、更にその左、両神山の右には御荷鉾山、その上に白い峰々(上信越国境あたりでしょうか)と、のんびり眺めていたい気分になります。しかし、先を急ぎます。この先の露岩帯に2mほどの一本橋が渡してありましたが、乗ってみるとたわむし、滑るし、左右に回る(傾く)し、でビビって下を通りました。更にひとしきり登ると、川苔山−蕎麦粒山の稜線に合流します。ここは、まろやかな草原の尾根で非常に気分のよい道です。南側の立ち木の間からは、今までこの尾根に遮られて見えなかった奥多摩の山々の上にぽっかりと浮かんだ富士山を今日初めて見ることができました。左に100mも行くと棒ノ折山方面への分岐がありますが、すぐ目の前100m程のところに見晴らしの良さそうなピークが見えるので寄っていきます。 日向沢の峰より三ツドッケ方面。この折り返し点となるピークが、日向沢の峰(南峰)で、本日の最高点(1356m)になります。ここからの、景色は秀逸です。蕎麦粒山・三つドッケ・から雲取山へ連なる長沢背稜、さらに石尾根・その左に奥多摩の山々、そして、その上の富士山は、あの有名な雁ヶ腹摺山からの旧500円札の富士山と比べても優るとも劣らない構図でししょう。また、ここからは、下方に見える林道以外の人工物が目に入らないので、意外に山深い感じがします。ここでも、のんびりしたいのですが、ここからが、本日のハイライト、未知の領域へ入ります。どの程度の時間で棒ノ折山にたどり着けるか判らず、川井駅まで完歩できるかどうかの勝負所なので先を急ぎます。 長尾丸への道の鉄塔ピークより有馬山方面。先ほどの分岐点まで戻り、棒ノ折山方面への道に入ると、すごい下りが続きます。そりゃそうです。1300mベースの尾根から分岐して900mベースの尾根になるのですから。やがて、またまた送電鉄塔の広場に出ます。先ほどの、仁田山の南の鉄塔から電線が谷を渡って下りてきています。有間山南部のコブコブを横から眺められますし、ここも風光がよいところです。このあたりまで歩きやすい道が続きましたが、この先、所々薮が出てきます。しかし、ルートが分かりにくくなるほどのものではありません。むしろ、何個所かある尾根の広がったゆるいピークの先の斜面みたいな所の方が注意が必要でした。木にテープ等巻かれているのですが、尾根が広くなったり屈曲したりしても、欲しいときに必ずあるとは限らないからです。 全体には下り基調ながらも、いくつかのピークを越えて行きました。静かな山歩きが楽しめますし、植生が変わったり、露岩が出たりと、結構変化もあって、時間さえ気にならなければ楽しめるコースだと思うのですが、そろそろ日没が気になりだして、そのうちピークを通過するたびに、そこが長尾丸山でないことにガックリ来るようになって来ました。しかし、始め抑えたのが奏功したのか、今日は歩き始めてから6時間以上経っても足は生きています。長尾丸山付近からは再び道が良くなります。 着いたのがもう午後3時過ぎとあって、さすがの棒ノ折山にも、無線家が一人いたのと、ハイカーが後から一人来ただけでした。ここからは、川又へ下るのが最も早いのですが、本日の目標は青梅線の駅への完歩です。時間的にヤバければ、30分ほどで奥茶屋へ下れば後は大丹波川沿いに1時間強の車道歩きで、川井駅に着きます。しかし、「道は整備されているはずだし、懐中電灯も持っているし、車道歩きを減らしたいし。」などと考えてこのまま岩茸石山方面へ尾根をたどることにしました。小さな登り下りがあることは知っていましたが、思っていたほど下り基調ではありませんでした。つまり、結構登りもあったのです。それもそのはず、名坂峠は、そんなに低くえぐられた鞍部ではなく、岩茸石山のベンチがすぐ上に見えるほど直下の肩みたいな所だったのです。どんどん、日は傾いて行き、一人旅の心細さをヒシヒシと感じながら先を急ぎました。稜線上から見る夕景はきれいでしたが、勿論見とれている余裕などありませんでした。 名坂峠への道より高水三山方面。名坂峠では、岩茸石山−惣岳山−JR・御嶽駅へとたどる延長戦は断念し、迷わず大丹波への下降路を選びました。なんとか、足元がはっきり見えるうちに下山出来ましたが、終盤へ来て足を使ったためか、大丹波の車道へ出た所では、へとへとになっていて、大丹波川沿いの川井駅への30分ほどの車道歩きも結構長く感じました。田舎の道にしては街路灯が完備していましたが、意外に車の通る頻度が高く、歩道のない区間ではビビりました。川井駅に着く頃にはすっかり夕暮れ時となって気温も下がっていましたが、幸いにも5分ほどで登り電車が来ましたので、この無人駅のホームで凍えることはありませんでした。 今回のハイキングは、非常に充実した素晴らしいコースでしたが、途中随所にのんびり休みたいような、風光の良い所がありましたので、可能なら分割して、一部分だけ訪ねるのもいいかも知れません。 尚、ルート中、おおよそ標高1000m以上の北面には、わずかに雪がありましたが、最大2cm程度で、歩行には支障ありませんでした。 ▲項目索引▲ ◎トップページへ戻る◎ |