2001年12月 9(日)快晴 (西武秩父入口BSより秩父鉄道バスで)浦山大日堂BT848…917新秩父線60号鉄塔925… (460) 29 (670) 110 1135仙元峠1145…1159蕎麦粒山1205…1245日向沢ノ峰1302…踊平1325…狼住所1402… (1450) 14 (△1473) 40 (1356) 23 37(1260) (真名井沢北稜トライ)…狼住所1631…1833JR・鳩ノ巣 149 122 今回の結果からは 体力度B+ 神経度C(歩行合計約9時間00分) ※真名井沢北稜トライしていなければ多分 体力度B 神経度A+(歩行合計約6時間30分) ◇五万図 秩父・五日市 □筆者参考文献 「埼玉県の山」(堀江昇他) 奥多摩と奥武蔵を分ける都県境尾根にある日向沢ノ峰(ひなたざわのうら)からは非常に素晴らしい景色が楽しめます。北面は秩父盆地方面を除いて立木に遮られますが、南面の展望は最高です。富士山を中心とした構図は500円札で有名な雁ヶ腹摺山のそれにも、勝るとも劣らないでしょう。 特筆すべきは単にたくさんの山々が見渡せるだけでなく、公共交通利用東京日帰り圏にしては珍しいくらい山深い感じのする景色が楽しめるところなのです。これだけ好展望の南面の視界の中で目に入る人工建造物は下方の地味な林道だけ。建物は勿論、送電線(これがないのは意外に珍しい)もダムも仏像(^^)もありません。比較的近くの山に囲まれて閉塞感を伴う山深さを感じる所は結構ありますが、広く遠近感もある展望でありながらこれだけ山深さを感じさせる所は東京日帰り圏には他に殆どないでしょう。 日向沢ノ峰には過去3回行った事があったのですが、何れも縦走の中頃と言うことで時間的な焦りもあり、通過点のような扱いをしてしまっていました。今回はここをメインに考え、登路としては、静けさとちょっびり冒険を求めて、ガイドブックでもバリエーション的扱いをされることが多い仙元尾根を選びました。日向沢ノ峰で充分景色を堪能した後、短くて一番交通アクセスの良い大根(おおね)ノ山ノ神経由で速やかに下ろうという算段でしたが…(^^;)。 ところで、五万図の山名注記は複数のガイドブックや山地図で共通に使われているものと異なっていたり、どのガイドブック等にも載ってる山が無名だったりすることが多かったのですが、市井の声も少しは天に届いているようで、最近(ハイカーから見て)改善傾向です。現在筆者手持ちの5万図「秩父」は、昭和44年版、昭和46年版、昭和55年版、平成元年版、平成10年版の5葉ですが、昭和44年版になかった蕎麦粒山、有馬山、日向沢ノ峰が昭和46年版には出現。そして、平成10年版になって(平成元年版〜平成10年版間で筆者が持っていない版での可能性あり(^^;))天目山、棒ノ嶺、川乗山の注記がそれぞれ天目山(三ツドッケ)、棒ノ嶺(棒ノ折山)、川苔山になりました。「川海苔が採れたから川苔山」という由来話は知っていましたが、5万図はこれまでずっと頑強に「川乗山」だったため、最近での趨勢は「川乗山」になっていたところでしたので意外な感じがしました(^^;)。 秩父鉄道・秩父駅を8時に出る金倉橋行バス(これに乗れなければタクシー利用)に西武秩父駅入口で乗るために、西武線・池袋601発準急飯能行に乗ります。飯能で703発西武秩父行に接続、西武秩父には752着。駅前を直進してR140に出た右手に秩父鉄道バス・西武秩父駅入口BSがあります。バス停標識を見るとバスは809発で浦山大日堂行でした。ダム完成で延長されたのでしょうか、予定していた金倉橋から約15分の車道歩きがなくなりました(^^)。5分ほど遅れて来たバスはマイクロバスで、終点まで乗客は筆者1人でした。 始めR140沿いに走っていたバスは左へ分岐し、浦山ダム付近で一気に高度を上げてダム湖沿いに進んで行きます。湖が終わり、終点近くなると道は細くなり、バスは民家の軒先や立木をかすめるようにして進みます。終点の浦山大日堂BT横には清潔な水洗トイレがありました。 少し戻って赤い橋を対岸に渡り左へ少々で大日堂。その裏手、道なりに左へ行くと沢へ向かってしまいます。注意書きに促されて戻って来ると、コンクリート垣の右端が階段になっていて指導標もありますのでそこから登って行きます。 ジグザクに急登して一汗かかされる頃尾根に取付きますが、そこの右手の送電鉄塔(新秩父線60号)下で一休み。ここは、展望の良いところです。ここからの尾根道は、59号、58号、57号の各鉄塔下を通り、時々右手に三ツドッケ、大平山方面、左手に大持山、有馬山を見ながら進む穏やかな道で、気分の良いところです。 新秩父線60号鉄塔より三ツドッケ方面。その後、尾根の左手を行く山腹道となり、やや外傾して谷方面にずり落ちそうな箇所もありましたが、それよりも猟犬を連れ、銃を持ったハンターに出合ったことの方がビビりました(^^;)。山腹道に飽きた頃、右、左、右と登って再び尾根に取付きました。 少し和んだ後、緩急何段か繰り返す本格的な登りが始まります。この途中で右手立木越し見る三ツドッケは5つくらいのピークが鋸歯状に並んで精悍な面構えで、撮影しようと思いましたが、「もう少し、木の枝に邪魔されない所」と思って撮り損ねて進むうちにだんだん縦位置になっていつもの三ツドッケの姿に近付いてきてしまいました(^^;)。やがて都県境尾根も近くなり、有馬山も下に見るようになり、更にふた踏ん張りくらいしてようやく小さな石祠のある仙元峠です。 仙元峠。ここまでハイカーには出合いませんでしたが、藪は全くなく、指導標も完備で、思っていたより遙かにいい道でした。仙元峠は隣の蕎麦粒山より僅かに低いものの、れっきとしたピークです。峠は普通、一番少ない登りで稜線を乗っ越す事が出来る鞍部にあるものです。三つ峠のように「突起」から来た山名で本来の「峠」ではない地名もあります。しかし、ここに登り着いた感じは峠という雰囲気がしないでもありません。現在奥多摩町方面へ乗っ越して行く道はないものの、谷筋が地形的に厳しかったりすれば、尾根筋に往来が出来、その結果ピーク上が峠になることもないとは言えません。ここは「峠」、「突起→峠」、どっちなんでしょうね?(^^)。 さて、いよいよ日向沢ノ峰を目指して都県境尾根を行くことになります。ひと下りして、まずは本日の最高峰:蕎麦粒山へ登ります。仙元峠の樹間からはピラミッド型に見えたのですが、この方向については、縦位置のため急登一気にも見えたものの、ジグザグが切ってないのに両手動員とはならない程度の坂と平坦な道が交互に来るだらだらとした登りです。とは言っても仙元峠から大した距離ではなく15分ほどで山頂に着きます。以前来たときよりは開けて明るい感じの山頂ですが、先客が5〜6人もいたので、デジカメ写真を撮って、5分ほどで辞します。 蕎麦粒山から日向沢ノ峰方面への下りは、それなりの坂で、防火帯のためか掴まる立木もなく足下に注意しながら行きます。坂の途中では前方に川苔山が目に入りました。 蕎麦粒山の山頂直下から川苔山。 日向沢ノ峰へ続く尾根道。明るく開けた防火帯の道は広い尾根の上であったり、稜線から南緩斜面に広がったりしながら緩い起伏で続きます。やがて、左手に有馬山方面への道、そのすぐ先で都県境が継続する棒ノ折山方面への道が分岐していますが、この本線に比べるとバリエーションルート的位置づけなのか、どちらも分岐の指導標は控えめです。棒ノ折山方面分岐の50m程先、僅かに登った所が本日の白眉:日向沢ノ峰で、ここの風光のすばらしさについては冒頭に記したとおりです。 日向沢ノ峰から富士山。デジカメ写真を撮りまくります。いつまでいても飽きない眺めで、本日はここでゆっくりすることが目的なのでしたが、風の冷たさに負けて15分ほどの滞在でした。久々に標高差1000mを越える本格的日帰りハイキング(?)でしたが、まだ疲労度もそれほどでない中、後は、川苔山の登山道を利用して下るだけ。大根ノ山ノ神ルートなら時間的にも体力的にも余裕を持って鳩ノ巣駅に着けそうです。 次の地味なピークは、筆者的には日向沢ノ峰南峰だと思ったのですが、複数のガイドブックによると、先程絶景を堪能したピークが日向沢ノ峰南峰で、北峰は有馬山方面への分岐点付近の筆者が気付かず通過したピークらしいです。地形図的にも確かにそれらしい感じがします(^^;)。その先、標高差10m以上ありそうな岩場の下りが現れます。直立しているという程の傾斜ではなく、相変わらず横幅は広くいろいろルートが選べ、見たところフットホールドも豊富ですから一般ハイカーにも下るのが技術的に困難という程ではなさそうでしたが、奥多摩の主要ルートでこれくらいの所なら鎖が付くはず。それがないと言うことは巻き道があるはずで、探すと、右手の木立の中にありました。無理をせず巻き道を使いました(^^;)。やがて、日向沢ノ峰圏と川苔山圏の境の鞍部:踊平ですが、あろうことか、この付近、下をトンネルが通っているみたいで、両側に林道が見えます。まあ、鞍部まで車道が登って来て切り通しにされるよりはマシですが。 広くて明るい道は尚も続きます。川苔山の北側を取り巻く尾根に入ると、川苔山がすぐそこに見えます。曲ガ谷北峰の手前で尾根道を左へ分かれる巻道に入ります。この道は、曲ガ谷北峰・南峰の東側を巻いて、狼住所(おおかみすんど)で南東:赤杭(あかぐな)尾根方面と南西:舟井戸の鞍部(川苔山と本仁田山を結ぶ尾根上の鞍部で、大根ノ山ノ神へのルートが分岐)方面に分かれています。 しかし、狼住所では予定に反して赤杭尾根方面に入ってしまいました。実は、踊平を通過しているあたりから、折角ここまで来て元気なのだから「中央線の山を歩く」(藤井寿夫著)で読んだことのある真名井沢北稜を下ってみたい、という誘惑にかられていたのです。赤杭尾根に入ってすぐに真名井沢北稜への分岐点ピークがある筈なので、今日はその参考書のコピーなど持ってきていないのでに取敢ず行ってみることにしてしまったのです。実際、行ってみても普通なら問題なかったはずなのですが…(T_T)。 【川苔山付近の道】赤杭尾根ルートに入って10分弱で左手にマウンドを発見。本線は右から巻いて行きますが、「こいつは怪しい」と思い登ってみると、果たして「真名井沢ノ頭」と小さく表示してあります。ここが赤杭尾根から真名井沢北稜が分岐する所で、ガイドブックによってはここを「曲ガ谷南峰」としている場合もあるようです。 真名井沢北稜へ分岐する道の入口は明瞭でした。5万図を見ると尾根の後半は送電線が併走しています。近くに車道はないので、多分、東電の仕事道も併走しているはず。手元に5万図以外の資料はないけれど、真名井沢北稜の主尾根上の送電鉄塔を目指して行けば良さそうです。現在、14時を少し回ったところ。すんなり行けば2時間はかからずに、日没までには余裕を持って大丹波川沿いの道に出られそうです。また、途中で道が不明瞭になったら、日没までに狼住所に戻って来れば、悪場も迷う所もなく比較的距離も短い、狼住所−舟井戸の鞍部−大根ノ山ノ神ルートを、暗くなっても懐中電灯使用で何とか降りられる筈です。と言うことで、もし困難なら1時間くらいで見切りを付けて戻ってくるつもりで、予定になかった真名井沢北稜ルートに入ってしまいました(^^;)。 初めの方のスズタケ密生地は道幅分だけは刈ってあり全く問題ありません。その先もさして藪もなく、尾根が痩せたり広がったりしながら歩き易い道が続いています。時々樹間に視界はあるのですが送電鉄塔の繋がり方はなかなか見えません。しかし、ところどころの木にビニルテープが巻かれているのでそれを頼りに快調に下って行きます。急斜面を下って、テープが見当たらなくったと思ったら、その先でやっと今いる尾根にある鉄塔と送電線の様子を確認してがっかり。鉄塔の右側に続く送電線は、次の鉄塔へは尾根沿いでなく谷をまたいでいる感じ。支尾根に入ってしまったのを悟り、引き返します。 急斜面を登り返すとほどなく次の鉄塔への分岐がありましたのでそちらへ。今度は、明るく開けた鉄塔台地まで行きました。しかし、この鉄塔も支尾根上でした。現在15時21分。そろそろギブアップか。しかし、ここからは、次の鉄塔に向かって東電の仕事道があるようです。その道は山腹を巻いて3番目の鉄塔に導いてくれました。主尾根上の道が見付けられなくても、こういう、鉄塔と鉄塔を結ぶ道を次々に拾って行けばいい筈です。 しかし、3番目の鉄塔に来てみると、そこから先の道が見つかりません。現在15時40分。これ以上探して道があったとしても、大根ノ山ノ神ルートのように暗くなっても下れるような道ではないでしょうし、こんな調子では山中で日没となるのも必定。ついに、ギブアップ。狼住所まで戻ることにします。(これら3つのの鉄塔は新秩父線46号、45号、44号であると思われます。つまり、仙元尾根の登りで併走していた60〜57号鉄塔を通る送電線の続きです(^^)。) 真名井沢ノ頭までの道は、焦って戻りましたので標高差450m以上を所要40分くらいでした。しかしその最中は登っても登ってもたどり着かない感じで非常に長く感じました。まあ、真名井沢ノ頭まで来れば取り敢ず一安心。更に狼住所まで10分弱戻る頃、本当の(地平線への)日没はまだですが、既に太陽は山の陰に沈んでいます。現在16時半、まだ空の明るさで行動出来ますが、大根ノ山ノ神ルートの下りでも、鳩ノ巣駅着は18時過ぎになりそうなので、当然途中からは懐中電灯使用となるでしょう。ザックの中をちょっと確かめますが、ありゃ!?、見つかりません。懐中電灯はいつも入れっぱなしにしているのでない筈はありません。何れにしてもここでぐずぐずしているのは周りが暗くなるばかりで得策ではありませんので、さっさと歩き始めます。 舟井戸の鞍部を過ぎ、無事大根ノ山ノ神ルートに入った頃にはかなり暗くなりました。生憎月も出ていません。どんどん下って行きますが、やがて、天が開けた場所では薄明を頼りに何とか行動できるものの、樹林帯では何も見えなくなりました。いよいよ、懐中電灯に頼らなければいけない時刻が来てしまったのです。 大根ノ山ノ神への下りから夕暮れの大岳山。薄明の届く場所で立ち止まり、今度は、ザックのファスナーを全開して、内容物を一部取り出して、絶対あるはずの懐中電灯を探します。しかし、およよよよよよ!。ない!。いつも、予備球や予備電池と共にザックに入れっぱなしで、実際は使わなかったことが殆どなのに、こんな肝心の時に入っていないとは(ToT)。マッチ・ライターの類もないので即席松明を作ることも出来ません。こんな所で動けなくなってしまったら凍死してしまうかも(T_T)。それを恐れて夜通し運動などしていたら、寝ないで朝帰りとなって疲労と睡魔で翌日の出勤は不可能。仕事の約束が入っているのに「奥多摩で遭難してポカ休」では、どれほどの非難を浴びるか分りません。当分は山へは行かないことを約束させられるかも。これは、今までのハイキング人生で最大のピンチ!?、いや、ヘタすれば最後のピンチにもなりかねない(^^;)。 10年前なら絶望的状況だったと思います。しかし、さすが21世紀、デジカメがあります。こうなったらその液晶ディスプレイに頼るしかありません。「溺れる物はワラをもつかむ」というわけで、半信半疑でデジカメの再生ボタンを押してみると、意外に使えるのです。普段の明るい場所では大した光でもないのですが、真っ暗闇の中では瞳孔が全開するためか、結構足下1〜2mの様子が判りますので、このルートなら何とか躓かずに歩くことができます。また、指導標の「鳩ノ巣」の文字を確認出来ることも心強いものです。あとは、どこまで電池が持つかですが、とにかく少しでも下へ行けば、万一の場合の明け方の冷え込みもその分弛む筈ですから、どうであろうと急いで下るしかありません。 初めは樹林帯の中だけだったデジカメの使用も、やがて薄明もなくなり、のべつ幕なしとなりました。数分毎にパワーセーブ機構が働いて電源が切れる度にドキッとします(^^;)。そして、再びボタンを押してバックライトが点灯する度にホッとする繰り返しです。しかし、何とか電池は鳩ノ巣駅の裏の集落に出るまで持ちこたえてくれました。現在使用しているデジカメは撮影時、光学ファインダーを使う仕様のため、ニッケル水素電池(1600mAh*4)には、8Mスマートメディア1枚半を撮影後も、かなりのエネルギーが残っていたようです(^^)。以前使っていたデジカメは撮影時も液晶表示の仕様でしたし、そのころはニッカド(1000mAh*4)だったので同じ単三4本で8M1枚分撮影でギリギリだったのですが。 かなり必死に歩いてきたつもりでしたが、夜道で照明も貧弱(^^;)だったためか、狼住所から鳩ノ巣駅まで1.5時間の予定が2時間かかりました。しかし、普通に帰宅し、翌日は(筋肉痛はあるものの)普通に出勤して業務を遂行することが出来たのを幸せに思いました。 帰宅後調べてみると懐中電灯一式は別のザックに入っていました。何回か前のハイキングに携行品が多かったのでやや大きめのザックを使ったとき、そちらへ入れて、その後そのままだったことを忘れていたのでした。以上、「ドジ亀がデジカメに助けられたおマヌケな話」でした(^^;)。 ▲項目索引▲ ◎トップページへ戻る◎ |