高岩尾根から梅ヶ谷峠(奥多摩)


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００２年３月１６日(土)曇時々晴

(ＪＲ五日市線・武蔵五日市よりバス)大岳鍾乳洞入口BS728…845高岩山900…
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(360)　　77　(･920)　　23

923高岩山展望台938…1040御岳神社1048…1112御岳平1117…1154日ノ出山1159…
 　　　　(1000)　　62　　(･929)　　24　 　(820) 　　37　　 (△902)　　34

梅野木峠1233…1245三室山1254…1310鉄塔２３号1319…(迷２０分)…肝要峠1405…
　(630)　　 12　 (△647)　　16　　　　 (520)　　　　　26　　　(450)

(迷40分)…肝要峠1445…梅ヶ谷峠1517…1557青梅線・宮ノ平
　　　　　　　　　　32　 (340)　　40　　　　　　(220)


　　　　　　 　　　　　　体力度Ｂ 神経度Ｂ (迷った道除く歩行合計約７時間00分)
◇５万図　五日市
□筆者参考文献 「関東百山」(打田鍈一 他)　エアリアマップ「奥多摩」(昭文社)

　御岳山－金比羅尾根と大岳山－馬頭刈尾根の間に位置し、それらを結ぶ主脈から東へ突き出す比較的短い尾根が高岩尾根(サルギ尾根)で、五万図にも高岩山の注記があるのですが、道を示す破線はなく、多くのガイドブックの地図やエアリアマップにもこの尾根を辿るルートは記入されていません。しかし、「関東百山」(実業之日本社)の「大岳山」の項で打田鍈一氏が紹介しており、ネットで検索したところ道もありそう。五万図の露岩記号にはそそられるものがありますし、この山域にあって静かな山歩きが出来そうなので藪漕ぎ覚悟で出掛けてみました。
　困難も予想されるので、早朝の出発とし、もし高岩尾根をすんなり通過できたら、日ノ出山の先へ足を伸ばし、あと２つの課題も達成しようと言う希望。一つは三室山の山頂到達及び三角点の確認。吉野梅郷～日ノ出山のコースは過去上下合わせて３回は歩いている筈なのですが、途中にある三室山の山頂を踏んだ記憶がありません。もしかして藪の中なのか、それとも巻いてしまっていただけなのか？。
　二つ目は、普通は左折して琴平神社－梅郷へ行くべきところ、三室山付近からそのまま尾根を直進して肝要峠、梅ヶ谷峠へと辿ることです。この道も高岩尾根同様多くのガイドブックの地図やエアリアマップにルートが記入されていないので、ささやかな冒険心をくすぐられます(^^;)。

　早朝の電車・バスの接続が良くて、大岳鍾乳洞入口バス停を７時半前に出発することが出来ました。しかし、好事魔多しというか本末転倒(^^;)というか、ザックの中に手袋を見付けることが出来ません。今朝、自宅でザックの内容確認のため一旦中身を全部出した後、戻すのを忘れたようです。藪山には皮軍手必携。増してや地図に道記号の無いような山に挑もうというのに。この季節は藪が予想されなくても寒さに応じてスキー手袋あるいは普通の軍手を携行していたのですが、暖かかったので本日はそれもなし(T_T)。藪がひどかったら携行しているセーターに手を通してしのぐ事にして、退却覚悟で出発(^^;)。
　目の前の養沢神社に入ると、右手に想像していたよりたやすく登山道発見。植林帯の道は始めは非常に急ですが尾根道らしくなると、適度な傾斜でぐいぐい高度を稼ぐことが出来、いい感じ。
　最初のピーク(上の鞍部との標高差が小さいため五万図640ｍ等高線が閉じていない。)で、道は左へ折れ、次の登りからは露岩と雑木が現れます。登りが一段落すると、樹間に目指す高岩山が望まれます。

　登り道の樹間より高岩山。

　一旦穏やかになった後、次の登りを経て２番目のピーク以降は徐々に高度を上げて行きます。やがて着いた明るく小広い場所は雑木の樹間から周りの景色も見え、高岩山の山頂かと思いましたが山頂を示すものはなく、「(下)高岩山」(「下」は誤りのため消されている)のプレートがある山頂はそこから１～２分奥へ僅かに下って登った場所でした。樹間に大岳山や高岩山展望台の四阿等を眺めつつ一人きり、至福の時を過ごします。
　高岩山から下り、小さなピークを僅か左から巻いた後の鞍部から展望台へは、まず展望台より左側へ登り、922ｍ標高点方面から来る一段上の尾根に取付いて、それを右上します。打田氏が「モノノ７分」と書いているこの登りも１０分くらい掛かりました。もしかしたら当時このような道はなく、彼は、左へ行かずに四阿めがけて直登したのかも知れません。ここまで、藪も殆どなく、道も明瞭、登り始めの神社裏が急だったくらいで、露岩帯にも大した危険個所もありませんでした。取り敢ずここからは、手袋不要の遊歩道となるので一安心(^^)。
　展望台四阿からの眺めは抜群です。背後(西面)の御岳山から、男具那ノ峰(奥の院)、鍋割山、大岳山、馬頭刈尾根と続くうねりは遠景を遮ってしまってはいますが大迫力でのしかかり、正面(東面)にはさっき登った高岩山がもっこり、その向うから左へ続く金比羅尾根は麻生山、日ノ出山、御岳山へとつながっています。特に日ノ出山は四方に尾根を張り巡らして他の場所から見るよりも格好良く見えました。この日はモヤっていて関東平野の遠景は見えませんでしたが、馬頭刈尾根の向うに丹沢山塊、男具那ノ峰から御岳山にかけての向うには日向沢ノ峰から棒ノ折山、高水三山と続く尾根、更に奥には有馬山や奥武蔵の山々がうっすらと望めました。

　展望台より日ノ出山方面。

　充分展望を楽しんだら出発。僅かな比高のピーク２つめからは、岩石園方面へ分岐があり、その先からは細かい上下のない植林の遊歩道となります。この辺りを上高岩山と呼ぶようですが、人によって高岩山展望台ピークを指したり、分岐ピークを指したりではっきりしません。しかし、筆者的には、それらは山頂と呼ぶには余りに比高のないマウンドなので、この辺で一峰に命名するなら、次に登る(左に巻き道あり)1040ｍ等高線ピークを上高岩山とするべきだと思います。
　本日最高点となる1040ｍ等高線ピークを越えて先程分れた巻き道を合わせると僅かで高岩尾根と御岳山－大岳山の主脈との接点となる鞍部であるアクバ(芥場)峠で、御岳～大岳のメインルートに出合います。普通はここまで来れば大岳山を目指すものでしょうが、冒頭に挙げた課題達成のため、御岳山方面へ向かいます。
　御岳山～大岳山のコースは男具那ノ峰、鍋割山等の山頂を踏んで行く尾根伝いのルートもあるのですが、多くのハイカーで賑わうメインルートはそれらの山腹を巻いて行く楽な道です。しかし、それならずっと御岳山－大岳山の主脈の山腹を伝って行けばいいと思うのですが、アクバ峠から御岳方面へはそこから始まる谷の右岸高岩尾根側をしばらく行きます。この辺りはいつもぐちょぐちょぬかるんでいる印象が強いです。しばらくして、左へ折り返して沢を渡り、目出度く左岸主脈側を行くことになります。
　御岳山が近付くと右手に張り出した尾根上は長尾平園地となっているので寄って行きます。ここからは、男具那ノ峰が槍のように鋭く見える他、高岩山や高岩山展望台の四阿も見えます。やや下りつつ奥行きは３００ｍ以上ありそうで、中段には立派な泡トイレもあります。しかし、上から見ると先へ行くほど空中へ飛び出す感じなのに、少し奥へ行ってみると増えてくる立木に邪魔されて展望が悪くなります(T_T)。
　メインルートに戻ると程なく左へ御岳神社の分岐の木段。この周辺へは１０回くらいは来ているのですが、先程の長尾平園地同様、御岳神社も今回が初めてかも知れません。今日は時間も十分あるので寄っていきます。境内の奥の最高点は残念ながら立入禁止区域でした。ここから三ツドッケも見える裏道を下って、ビジターセンターへちょっと寄っていきます。ここも初めて。
　ここで気が付いたのですが、日ノ出山への分岐は行き過ぎてしまっています(^^;)。しかし、すぐには引き返さず取り敢ず御岳平へ。ケーブル御岳山駅のある御岳平の茶店でそばでも食おうと思い、テーブルに着いたのですが、すぐには注文を取りに来ず。客は殆どいないし、この調子だと注文しても、これから湯を沸かすなんて恐ろしいことも思い浮かんで、早々に店を出て、一目散に日ノ出山へ。
　先程のビジターセンターの前を通り、道標に従って左へ分岐、日ノ出山への土の道となります。もう桜の開花宣言も出ようかと言うこの日ですが、里にはまだ梅の花が多く、この辺は、梅郷の梅見兼行らしきハイカーがごっそり。道は非常に歩き易いですし、こういう人混みはさっさと歩きます。ところが、２～３列になっておしゃべりしている輩や１０人以上の団体が行く手を塞ぎます。辺境のキャラバン隊じゃないのですから徒党を組んで歩く必要はないと思うのですが(T_T)。仕方なく、いけない事と知りつつ、路肩走行にて追い越し(^^;)。
　日ノ出山は桜満開の上野のお山みたいな混みよう。みんないい空気を吸いに来たのを知っているはずなのに群衆の中で平然と煙を出す輩までいます。そんなに煙が吸いたきゃ風下へ行け！。高岩尾根方面の写真を撮り５分間休憩して出発。

　日ノ出山より、手前高岩尾根と奥大岳山から馬頭刈尾根。

　先程同様混む道を先程同様さっささっさ。電波塔の先、梅野木峠で車道を渡り１０分ほど歩くと、吉川英治記念館方面への左分岐のすぐ先、左に高まりがあり本線は右側を巻いて行きます。左の登り道が三室山への道に違いないと思い、登って行くと、果たして、小広いマウンドの先にやや狭い三角点ピークを発見。展望はありませんがちゃんと切り開かれていて「三室山」のプレートもありました。藪もない普通の山頂で、本線の雑踏を離れて一休みするにはいい場所です。そのまま直進すると、先程別れた本線に出合いますが、ここは四辻になっています。左梅郷、右日ノ出山はメインルートですが、正面、そのまま尾根を行くのが肝要峠方面で登山地図にない道(それでも、入口に「通矢尾根」の標識あり)です。いよいよここへ入る訳ですが、先程の三室山への登りから既に高岩尾根以来再び未知の道へ踏み込んでいた事になります。
　通矢尾根に入った途端、人影が無くなります。しかし、その割には仕事道と言うよりはハイキングコースと言う感じのしっかりした道です。特に難路でもないこの道が、普通のガイドブックに取り上げられていない理由は、単に駅からのアクセスが良くない割にさしたる見どころもないせいだと思いました。しかし、流石地図にない道、高岩尾根のようにすんなり行くのがむしろ例外、やがて一筋縄では行かない事を思い知らされるのです(^^;)。
　この道は殆どの区間展望のない植林帯の道ですが、５万図の送電線が尾根と交差する地点には鉄塔があり、表示を探して新所沢線２３号であることを知ります。ここは、明るく開けて眺めの良いところなので一休み。通矢尾根に入って以来唯一(つまり本日最後)ハイカーに出会いました。
　この後、植林の間から、日ノ出山と麻生山の間に弛んだ尾根の上に顔を出した大岳山が見えますが、すぐ近く(高岩山展望台)から眺めた後なので、いつの間にか遙か彼方へに来てしまったような感じです。近くを見ると右下には車道発見。その先、道也では急降下する気配の所、左に水平な尾根道が分岐しているのでそちらに入りましたが、通矢尾根なら南東向きの筈が北東向きが続いておかしいので周りの景色を見て確認、やはり支尾根でした。戻る途中さっきより幾分東寄りの分岐があり、木の幹に縦書きで「カンヨウ→」と書かれているので入ってしまいましたが、進むうちに右手を見ると小さな谷を挟んで近くに遠景を遮って横たわる尾根あり。現在地が主尾根なら左右とも明るく開けているはずなので、ここも支尾根と判明。先程の矢印は来た方をさしていたのね～(^^;)。と言うことで、始めの分岐へ戻りました。２０分はロスしたでしょう(T_T)。急降下する道はなんだか車道にまで降りてしまいそうでしたが鞍部のため接近しただけでした。
　その後も尾根を辿ると、右下にはちょくちょく車道が見えますから、尾根沿いに走っているのだろうと思っているうち、とうとうその車道に出てしまいました。ここで右後から左前に斜めに、車道が通矢尾根を乗越しているのです。車道を挟んで反対側に「肝要」を示す指導標があり、小径が下って行きます。と言うことは、この付近が肝要峠(があった所？(T_T))でしょう。その小径の左手、切通しの法面の縁から登って、再び尾根道に入って行きました。
　今度は、左下にちょくちょく車道が見えましたから、乗越した後も尾根沿いを走っているようです。５万図を見る限り梅ヶ谷峠方面へは肝要峠の先１５０ｍくらいで左に分岐する必要があります。しかし、だいぶ歩いてしまっているのにそれらしき道が見つかりません。このまま、通矢尾根を五日市方面まで歩いてしまおうかという考えも湧きましたが、今回は初志貫徹で梅ヶ谷峠を目指すことにしました。以前、二ツ塚峠から西へ向かった尾根の先が梅ヶ谷峠なのでつなげたかったのです。
　取り敢ず適当に左折して車道に降りることにしました。旧来の道は、この車道で分断されているはずなので、車道上から梅ヶ谷峠への尾根道を発見しようと言う訳です。しかし、車道に近付くと法面は絶壁。少し肝要峠方向に戻って再トライ。しかし、やはり絶壁の上に出てしまいます。かなり戻って木の小さな赤テープに「梅ヶ谷峠」とあります。ここが、旧来の分岐点だったようです。これを行けば車道を上手く横切れると思いきや、その先はやはり絶壁の上。結局、肝要峠(？)まで戻りました。今度は４０分ものロスです。今日は早朝に出発し、高岩尾根をすんなり通過出来たことで時間的に余裕を感じながらの山歩きが続いたのですが、もう１５時近くともなり、流石に日没を意識します。

　車道から肝要峠？を振返る。

　さて、そう遠くない左手にある筈の、梅ヶ谷峠への尾根道の入口を探しながら、車道をとぼとぼと歩いて行きます。この道も、作ること(税金を使う事)が主目的の道だろうと思うと、そんな道に翻弄されるに及んで超ムカツいて来ます。
　そんな中、左手前方に建設車両が置かれている広場を見付けました。そこは左へせり出しているので、尾根を削った場所である疑がいあります。しかし、奥へ入ってみますと、この広場は残土の堆積によってせり出したものであり、尾根はそれより手前から始まっていました。道路へ戻ると広場よりやや肝要峠(？)寄りの、日の出町の看板(「この林道は林業振興と国土保全云々…」)の陰に隠れるように山道を目印である赤テープを発見。早速入って行きます。
　本日の今までのどの道より藪っぽい道ですが、もう時間が時間ですので、梅ヶ谷峠へ着こうが、どこへ降りようが、どうでもこの道を下る事に決めました。こんな時、途中小さな登りでもあると、その度に「すんなり下山できるのか(TｏT)」と不安になったりします。やがて、右下に舗装道路が見えますが、また登りになってがっくり。しかし、次の下りで祠の横から舗装道路に出ることが出来ました。
　この道路は左方向が登っていますからここは峠より南側です。左へ２００ｍくらい登ると日の出町と青梅市の境で、ここから下りに転じますから、ここが梅ヶ谷峠でしょう。しかし、二ツ塚峠方面への小径はここまで見付けることが出来ませんでした。さっきの祠辺り、あるいは更に南側かも知りませんし、もう現在はなくなっているのかも知れません。以前、二ツ塚峠から西へ辿ったときも、梅ヶ谷峠の手前で北へ下るのが順路となっていました。出来れば、つながるところまで行きたかったのですが課題として残りました。
　梅ヶ谷峠からは車道(付属の歩道)歩きです。梅の花など見ながら吉野街道を渡り、Ｙ字路を左へ行って多摩川を渡り、突き当たった青梅街道を右へ行って青梅線・宮ノ平に着きました。

　今回、皮軍手を忘れるという大チョンボを犯してしまいましたが、「地図にない道」にも幸いひどい藪は現れず、途中合計１時間ほどのロスはあったものの、ほぼ目的のコースを踏破することが出来ました(^^)。次の機会には、梅ヶ谷峠の東側の以前二ツ塚峠からの下山路とした道から入って梅ヶ谷峠南の祠までの空白を埋め、今回下った道を肝要峠まで登って、今回間違えて直進した通矢尾根を出来る限り末端まで歩いてみたいです。

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