九重山・天地山(奥多摩)



                     2003年 4月19日(土)曇時々晴

JR青梅線・奥多摩916…慈眼寺940…1048九重山1057…江戸小屋山1124…
      (340)    24 (380)   68    (・954)    27   (970)     36

1200鞘口山1217…大ダワ1237…1253鋸山1300…1347天地山1352…1414山ノ神1419…
  (・1142)    20 (990)    16   (・1109)  47    (・981)    22    (・674) 

(5分ロス)…老人介護施設1456…1535奥多摩
     32   (370)     39  (340)

                  体力度B 神経度B (歩行合計約6時間00分)
◇2.5万図 奥多摩湖


 一般的なハイキングコースであれば交通の便が良いコースほど人出が多い傾向は避けられません。従って、東京周辺ハイキング愛好家にとって、5万図「五日市」はメッカですが、この辺ですいたコースを歩きたければ、ガイドブック等に余り紹介されていないコースを探すしかありません。情報が乏しいコースであればコース自体の善し悪し(基準は飽くまで自分にとって楽しめるかどうか。)は行ってみないと判りませんが、誰にも出合わずに野山を歩けること自体、筆者には大きな魅力で、無名なコースでも、展望とか、花とか、ルートファインディングとか、岩場のスリルとか、それなれにプラスαはあるものです。
 今回、そういうコンセプトで「五日市」を見回して目に留まったのが、大岳山の入門コースの下山路として賑わっている鋸尾根から、鋸山の少し北で東側に分岐し天地山(・981)を通る尾根と、主脈上、鋸山と御前山の間にある鞘口(さいぐち)山(・1142 5万図・2.5万図に山名注記なし)から北に分岐し、981mピークを通って小留浦(ことずら)へ延びる尾根で、両者を奥多摩主脈でつなげば、奥多摩駅から適度な歩程の周回コースになりそうです。問題は、容易に通行可能なルートがあるかどうかなのですが、ネットで検索してみると不十分ながら情報を得ることが出来、どちらも下降路としての記述だったためもあり、取り付き点の詳細が判らないのが不安材料でしたが、通行可能のようでした(^^)。
 まず、天地山を通る尾根ルートは天地山の南側には岩場があり、その先は北東の山ノ神(・674)を通った後、老人ホーム(2.5万図に注記あり)へ下り着くとのこと。また、鞘口山北の尾根ルートについては、江戸小屋山(970m等高線)、九重山(九龍山 ・954)を通って寺(2.5万図、小留浦の南の斜面に卍記号あり)へ下り着くとのことでした。未知の岩場を下りに使うのは不安なので、九重山から登って鞘口山から鋸山へ伝い、天地山から下ることにしました。登り口でまごついては後の計画が大いに狂うので、前週、遅く起きた日曜日、九重山の登り口を偵察に行きました。卍記号は慈眼寺で、その裏の墓地の上は伐採地となっていて、九重山への尾根ルートらしき道は容易に見付けることが出来ました。これで、未知のルートに挑戦する目星がつきました。

 当日、少し寝坊して乗った電車は特快「おくたま1号」で、奥多摩駅着は914。ガイドブック等で情報充分なコースなら普通ですが、ルートファインディングを必要とするコースなら、ロスタイムを見込んでもう少し早い出発が望まれたところです。R411(青梅街道)を奥多摩湖方面へ行きます。橋を次々に渡って行け正面に九重山も見えます。笹平橋を渡って左手、奥多摩病院の裏を登って行くと慈眼寺に着きます。


 尾根への取り付き点付近。慈眼寺(赤い屋根)と伐採地。


 その左脇から登れば、墓地と伐採地の境あたりで山腹トラバース道に突き当たり、右へ登って行けば尾根上の道に出合います。左へ折り返して尾根道を登ると、左側へ尾根を巻いたり、この辺、道が錯綜気味ですが、丸裸の伐採地故視界は広く、尾根から離れないように道を拾っていくのは容易です。上部へ行くと、氷川の街を抱いた本仁田(ほにた)山が立派に見えますが、気分良く歩いたのも束の間、車道に出てしまいます。
 一瞬途方に暮れますが、すぐに左手の法面を登るはしごを発見、これを行くと尾根道となって、この辺も右手(西側)は伐採地ですが、低い送電鉄塔の先からは左(東側)斜面のずり落ちそうな細道となります。その先、ジグザグに登って再び尾根道となれば、やがてまたまた右手は伐採地となり、石尾根末端部と本仁田山の間に三ツドッケ〜蕎麦粒山の都県境尾根が見渡せます。


 九重山への登り道より、本仁田山の左奥に都県境尾根。


 この先、藪っぽい急登となり、道が不明瞭ですが、木のテープを追って登って行けば、傾斜が緩んで山頂という雰囲気。しかし、そこを登り切り、傾斜がやや弛んでも更にそれ以上の距離を木のペンキ印沿いに登って行かなくてはなりません。
 九重山の頂稜部は北西−南東に細長く、最高点付近を探しましたが、ネットの写真で見た山頂標識は発見できませんでした。南西面も急斜面ですが北東面は切れ落ちており低木帯のため、目の前の鋸尾根の左に本仁田山と重なった川苔山方面を見ることが出来ます。
 この先は、土の上に岩がタケノコの頭のようにごつごつと出た場所を下り、小ピークの樹間から九重山を振り返ります。更に行くと、やはり頂稜部が細長い江戸小屋山で、山頂には山名標識があり、「974m」と標高も書かれていましたが標高点もないのにどうして分かったのか謎です。江戸小屋山から下ると、左手が大規模な伐採地となっていて、鋸山がこのまま主脈をトラバースして取り付きたいほど指呼の間のように見えます。


 江戸小屋山南の伐採地から鋸山方面を望む。


 次の鞍部から、鞘口山へは藪っぽい道を標高差200mもの登りとなります。上部まで来るとかなりバテバテですが、目の前を左から右へヘビが横切りました。はっとして立ち止まると、ヘビ君も道の右手で静止。このまま対峙しているのも気味が悪いので、万一毒蛇(でもなさそうでしたが)だったらヤバいので猛然とダッシュ。主脈の太い道へ登り着いた時はヘトヘトでした(^^;)。
 ここにはベンチがあり、「鞘口山」の標識もあります。主脈縦走時なら何の変哲もない一つのコブに過ぎませんが、今回は一応、本日の最高峰にして最高点なので、ベンチから数m、標識裏手の山頂を踏んでから食事にします(^^;)。
 鞘口山から鋸山へは主脈上の何の心配も要らない道ですが、最近の不摂生に先程のダッシュもあって、避難小屋ピークやその手前のピークへの登りもバテ気味。更には、林道が乗越す大ダワから鋸山への登りは、通常使わなくていい所でも両手動員するほどヘロヘロでした。鋸尾根道へ登り着いた分岐点から右へ最後のひと登り、やっとの思いで鋸山です。
 鋸山の山頂は主脈から奥多摩駅方面へ分岐する要衝の地にありますから人の往き来は激しいのですが、植林の中で、自然的にはそれほど趣がありません。積まれた石の上に腰掛けて、バテバテ状態から多少なりとも回復を期するところですが、これからが第2の核心部ですから、日没までの時間を考えればそう長々と休んではいられません。小休止の後、出発。
 先程の大ダワ方面への分岐点は小さな鞍部で、奥多摩駅方面への鋸尾根ルートはまず少し登ります。その少し先に天地山への分岐があり、そこの指導標では「行き止まり」となっていますので、そちらへ入っていった筆者を見たハイカーにはキジでも撃ちに行ったものと誤解されたかも知れません。実際、ポピュラーなルートから無名の道へ入った近辺にはキジ紙の群落があったりすることも希ではないのですが、幸い、ここは手着かずに近い状態でした(^^)。ところで、もし、ルートを失ったりして前途が通行不能となった場合、登りの未知のルートなら登り口まで引き返して取り敢えず諦めればよいのですが、下りの未知のルートでは、そこまでの登りで体力を使って来ているうえ、引き返しも登りとなり、しかも既知の下りルートがある場所まで引き返してもそこで山道はお終いではなく、その後そこを下らなければならない訳で、負荷の大きさはかなり大きくなりますから、そうならないようにと、ここではかなりの緊張感を持って下り始めました。
 このルートは、道形は非常に不明瞭ですが、藪は殆どなく、尾根を行けば木に赤テープ等の目印が頻繁に見つけられますので、実際に歩いていくうちには不安感は減少しました。かなり下ったと思った頃、ようやく天地山の登りとなり、早速、事前情報にあった通り、露岩帯となりますが、初めは岩の間を行く感じです。しかし、その後突然、前途は高さ3mくらいの壁に塞がれます。正面はのっぺりしている感じで、ホールド豊富で登れそうなのは左の角ですが、左斜面も切れ落ちていてビビります。
 最悪、鋸尾根まで戻ろうか、やはりそれは辛いので死を覚悟(^^;)で強行突破しようかとまた一瞬途方に暮れましたが、すぐに、ネットの情報に「手強い」とか「悪い」とかいう表現が無かったことを思い出しました。これだけの悪場をどうしても通らなければならないなら、一語くらいはそれなりの形容があるはずで、それがないということはもっと易しいルートがあるはずだと気が付き、少し戻るとやはり左手に巻き道があり、固定ロープの助けも借りて、岩の間を比較的容易に尾根上に復することが出来ました。更に、赤テープ等を頼りに尾根に沿って岩の間を登って行くと、天地山に着きました。
 天地山山頂は樹林の中で、山頂名の標識等は地面に寝ていて、木洩れ日もない天候なのでちょっと不気味。大休止するつもりが、そそくさと退散しました。ここの下りも道形不明瞭ですが、山頂標識よりやや右手(東寄り)に一つ目の赤テープを発見してからは数mおきに赤テープがあるのでルートとしては明瞭でした。やがて、赤テープが減る頃には、ルートも明瞭な尾根になってきます。


 天地山の下りは目印豊富。


 またまた結構下ったと思った頃、2.5万図通りの、左山腹への道を分け、少々の登りで、山ノ神らしきピークに着きます。「山ノ神」と言うくらいですから、小祠くらいあると思ったのですが、何もない樹林の中で、一応この辺の最高点を山ノ神の山頂と同定し、デジカメに収めました。
 山ノ神から尾根道は東寄りへ下って行きますが、程なく北東へ分岐するのが老人ホーム方面へ下るルートの筈です。しかし、思ったより東進が永く続き、2.5万図で分岐点より先の位置であることが判る小さな登りも現れたので、行き過ぎと判明しました。赤テープはなくなった代わりに赤ペンキが現れたので、ついつい引き込まれてしまったのです。2分ほど引き返すと、右(山ノ神からの下りでは左手)に分岐する明瞭な道があり(思案の時間も含めてロスタイムは5分くらいで済んだようです)、ここへ入ると少し尾根を北東に進んだ後、左斜面をジグザグに下り始めました。植林の樹間に里の屋根も見え、安心感大爆発です(^^;)。
 やがて車道に出ると、左上斜面の飯場風プレハブは鳴き声と臭いから養鶏場のようです。山中でも聞こえていて、いやな予感がしていたイヌ(筆者が今まで山で一番被害に遭わされた動物)の声は、この建物の外にいる2頭によるもので、来てみると吠えられはしましたがつながれていたので一安心。この先は、知的障害者の施設のようで、切ったホダ木を運んでいるようでした。気が付いてみるとこの道自体施設の敷地のようで、闖入者の身としては、現地の人に気まずく挨拶しつつへカーブして道也に門の外に出ます。(後にネットで調べてみると、先の鶏舎も「東京多摩学園」の施設で、養鶏や椎茸栽培を営んでるとのことです。施設では天地山への登山道を整備し、一般登山者の通行もOKとのこと(^^)。)


 イヌ2頭に護られた(?)鶏舎。


 そのまま行くと今度は老人介護施設(2.5万図注記「老人ホーム」。下山路が正解であったことを確認(^^)。)前で左へカーブ。自然環境的には素晴らしい場所ですが、このような場所に続けざまにこういう施設を見ると、人間様の居場所なのに街から追いやられたような立地条件は廃棄物最終処分場と似ていて一瞬心が痛みます。
 老人介護施設の前を通り過ぎて突き当たりを左へ、池の堰堤らしき斜面の手前を右へ曲がり、更に左へ行くと多摩川右岸の歩道完備の広い道となます。真新しい感じの愛宕トンネルの手前から右へ行き、多摩川にかかる橋を渡れば駅はすぐそこです。

 本日は殆どの区間尾根道のルートを6時間も歩き、いくつかのピークも踏んだのに、1箇所の三角点にも出合わないという、不思議なコースでした。主脈に出てから鋸尾根まではひっきりなしにハイカーと出会いましたが、その前後、慈眼寺から九重山を通って鞘口山へ続く尾根及び、鋸尾根から分岐した後の天地山を通る尾根では狙い通り、一人の人間にも出会いませんでした。どちらの尾根も、通行には全く支障がなく、それなりの展望あるいは岩場のスリルも楽しめて、かなり良いコースだと思います。



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